レース後「ダントツでしたね」「楽そうに走ってましてね」と声をかけられましたが、決して楽なことはありませんでした。特にランの復路はずーっと辛かったです。折り返しでは2位に上がってきた松下篤史選手との差は約10分ありましたが、もし私が全部の信号で止まり、松下君が一度も止まらなかったら10分差もなくなると考えて、目いっぱい走ったので余裕はなく、すれ違うみなさんに声をかけていただいても満足な応答ができませんでした。この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。ご声援ありがとうございました。
結果的に20分以上の差がつき、「藤原はヤバいクスリでもやっているんじゃないか」と思った方もいらっしゃるかもしれません。みなさんだけに今季好調の秘訣を公開します。
ヤバいクスリはやっていませんが、飲んでいます、クエン酸飲料のメダリストを。毎日飲むようになって2年が経ちましたが、徐々に疲れにくい体質に改善されてきたと思います。メダリストは毎日飲み続けることでこそ効果があると実感しています。今回のレースで確信できました。私のほかにも松丸選手、谷選手、鈴木照幸選手も飲んでいるので間違いないでしょう。
私が何を食べているか興味がある方もいらっしゃるでしょう。私は肉、卵、乳製品を食べません。魚介類も週に2、3回しか食べません。果物、野菜、ごはんがほとんどです。バターや卵を使っているのでパンも食べていません。そんな食事でカルシウムは足りるのか、貧血にならないのかなど疑われると思いますが、ひとつずつ一定期間食べない実験してきた結果なので、問題がないと思っています。ただ私個人だけのことかもしれないので、すべてを真似ることはお勧めしません。
トレーニングに関しては、筋トレやストレッチは一切しません。スイム、バイク、ランの練習だけです。そのほかに背骨を動かすために「ゆる体操」は毎日やっています。ちょっと小難しい話になりますが、おつきあいください。
骨格標本で見たことがあると思いますが、背骨は、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎の計24個の骨からなっています(その下の仙骨と尾骨も含める場合もあります)。簡単にイメージすると、平たい円柱形のシーチキンのような缶詰が積み重なったような感じです。それぞれの椎骨の間には椎間板という軟組織があり、それぞれが関節としてつながっている関節の集合体と言えます。ですから傾いたり曲げ伸ばしたり、手首や指の関節とまではいかなくても、本来ならかなり自由な動きができるはずです。たとえば魚やヘビやトカゲの背骨は横方向に、イルカや馬やチーターの背骨は縦方向に、しなやかにそして波動的に動きます。人間も脊椎動物ですから、動物たちのように背骨がクネクネ動くはずです。しかし手足の動きだけで済ますような生活に慣れてしまうと背骨はほとんど動かなくなり、やがて背骨が動くものだという実感がなくなります。そうした人の背骨は一体化してしまい、例えて言うなら缶詰がパック売りになっている状態。もしくは雨ざらしの自転車の錆びたチェーンのようなものです。
動かなくなってしまった背骨を動かすには、まず錆びを落とすことです。チェーンをコネクトピンでつないだ後につなぎ目をしごくようなイメージで背骨の錆びを落としていきます。手足の動きだけで済ますようなトレーニングや生活をしていては、どれだけ激しい運動をどれだけたくさんこなしても改善できません。背骨を動かすための取り組みが必要です。私は40歳を過ぎてからゆる体操を始めました。最初は変化を感じることはできませんでしたが、1年経ったころから徐々に背骨が動くようになったと実感しています。少しでも背骨が動くようになって運動の質が変わっていきました。背骨を動かして運動すること自体が気持ちいいのです。腕や脚を酷使することで強張ってきたり乳酸が溜まる気持ち悪さとは対極にあるものだと感じます。四肢が解放され、今まで味わったことのないような大きく速い動きができるようになります。この気持ちよさは脊椎動物のDNAに刷りこまれている本性だと思います。だから毎日身体を動かしたくなるのだと思います。
スポーツする楽しさは人それぞれ、千差万別だと思います。私が感じる楽しさは変わっています。構造どおりに身体を使えたときに気持ちよさを感じること、つまり身体を動かすことそのものが楽しいのです。毎朝きれいな空気の中で走ったりバイクに乗ったりできることが、私にとっては何よりの楽しみです。レースはあくまでもその結果に過ぎません。
私の取り組みのほかにも世の中にはタイムアップするためのいろいろな取り組みがあると思います。今回思うようなレースができなかった方や残念ながら完走できなかった方には、新しい取り組みをして、是非来年も皆生大会に挑戦してほしいと思います。