鉄人皆生通信⑭ 皆生から世界へ
鉄人皆生通信⑭ 皆生から世界へ

鉄人皆生通信⑭ 皆生から世界へ

努力無限通信 VOL.14 
  チームテイケイ 小原 工

みなさんこんにちは。今年の夏は大変暑かったですがやっと涼しくなってきましたね。
僕の住む兵庫県猪名川町は朝は長袖がないと寒いくらいです。今年は秋が短く冬になるという噂がありましたが本当にそうなりそうな気配を感じます。トライアスロンシーズンも後半に入りましたが、みなさんはいかがお過ごしですか?僕の方は8,9月は世界選手権(ドイツ)やワールドカップ(北京プレ大会)の遠征帯同と子供の大会などの行事が多く、ビールの量が増えてしまいあまりトレーニンングができず少々お腹に脂肪がついてしまいました。これでは「まずい!」と思い日本選手権を目指すチームの後輩たちと練習を再開しました。
これからお腹の割れ目を取り戻します。そしてトライアスロン界の中年の星になります。

■鳥取砂丘ジュニアデュアスロン全国大会
去る9月23日、第7回鳥取砂丘ジュニアデュアスロン全国大会が盛大に行われ、170名のジュニアアスリート(小学生)たちが暑いレースを繰り広げました。この大会は私がシドニーオリンピックに出場したことを記念して作っていただいた大会で、5,6年生の男女優勝者には小原カップが贈呈されるものです。この大会のコースは子供たちにとって過酷なもので砂丘の砂の上を走り、坂を上り、バイクもアップダウンの連続コースで、また砂丘を走って坂の上のゴールに戻ってくるコース。たぶん大人が走っても苦しいでしょう。僕は子供たちを励ましながら全カテゴリーを一緒に走りました(ランのみ)が最後は足がガクガクになりました。でも、それだけに子供たちがゴールした時の達成感は何ものにもかえられないと思います。この経験は子供たちにとっていろいろな場面
で生きることでしょう。大会には東は滋賀県、西は熊本県、そして関西や四国からの参加も増え全国大会の名にふさわしくなってきて大会のレベルも上がってきまし
た。毎年参加している子供たちも多く、会うたびに成長を感じることもできます。残念なのは中学になるとこの大会には出場できなくなることですね。全国的にも中学、高校のトライアスロン大会は少ないのでやる気のある子供たちにはかわいそうな気がします。そんな中、昨年まで大会に出場していたある中学の女の子が今年はボランティアとして応援に来てくれていたことには大変感激でした。
さて、レースの方は低学年(1,2年の部)のカテゴリー以外は県外の選手がすべて制覇しました。地元鳥取の子供たちはレベルの高さを見せつけられましたが、今は勝ちにこだわらず楽しく続けることが大切ですね。
将来可能性を秘めている子供はたくさんいます。でもやめてしまう子が多い。そうならないよう親も気をつけなければなりません。自然の中で行う健康スポーツトライアスロン。勉強や他のことももちろん大切ですが、是非子供たちには続けてほしいスポーツと思います。そんなことを言っている僕ですが自分の子も出場していました。
長男(3年)、長女(1年)は今のところトライアスロンを楽しく自分から進んでやっています。
ただ、上の子は僕の言うことをあまり聞かないのでいつも腹が立ちそうになるのを堪えながら見ています。下の子は僕に似て負けず嫌いでコツコツやるのでなんと今回2位になってしまいした。これには本人も親もビックリ!でした。
この日本一広大な鳥取砂丘で行われるジュニアデュアスロン、誰でも参加できますし、きっと良い思いでができますよ。みなさんのお子さんも来年、家族旅行を兼ねていかかでしょう?

■ギリシャのコーチ、バシリス・クロミダス
僕がワールドカップや世界選手権を転戦していた頃、友達になった選手の一人にギリシャのバシリス・クロミダスという大柄な選手がいました。最初に話をしたのはフィリピンでの国際大会の時、一人で食事をしていたので僕のつたない英語で話しかけてみると優しそうでなんとなく気が合いそれ以降ワールドカップなどで会うと気軽に声を懸けあった仲です。
ギリシャのトライアスロン事情はあまり良くなく、年間に国で開催される大会が5レースしかないと前に聞きました。競技人口も少ないので国際大会に出る選手は自分しかいないとも言っていました。そんな環境にもめげず、シドニーオリンピックには一緒に出場し、僕はバイクで一時一人で先頭に立ちましたが彼はレースの中盤、3人で逃げてテレビの画面を独占していたのを思い出します。彼は3種目の中でバイクを一番得意としていていつも積極的に逃げを試みていました。
シドニーでは結局逃げは決まらずランもあまり走れなかったので、僕より後ろだったように記憶しています。
その4年後。彼が満を持して望んだ自国開催のアテネオリンピックはバイクのメカトラブルで走行不可能となり終わってしまいました。テレビを観ていた方は覚えているかもしれません。
その後しばらく彼と会っていませんでしたが、今年の4月にオーストラリアのワールドカップで久々に再開しました。お互いコーチとしての帯同で、女子選手を連れてきており、彼は「完全に引退した」と言いました。「もうレースに出ないのか?」と聞くと「出ない」という答え。引退の無い自分にとっては少しショックでしたがこれもそれぞれだから仕方ないと・・・
でも知ってますか?彼がアイアンマンハワイの18~24歳のエイジカテゴリーでコースレコードをいまだに持っていることを。確か1994年の記録で8時間50分台の記録なのです。先月北京で行われたワールドカップにも来ていたので他のレースの話を聞いたところ、な、なんとトライアスロンを始めてから3年目の22歳の時にアイアンマンスイスで8時間27分で完走しているとのこと!!!みなさん信じられますか?「バイクは過去にやっていたのか?」と聞くと「やっていない20歳から」だと・・・「それちょっとジョークじゃないの?」と確かめましたがどうも本当らしい。まわりに強い仲間がいないのにこの記録。たぶん”半端じゃない”トレーニングをしていたのだろうと予想がつきます。
それじゃなけりゃこんな記録は出せないし、現在でも世界のアイアンマンでは22歳という若い年齢で世界のトップクラス選手はほとんど存在していないと思うからです。
彼は今37歳。まだワールドカップには一人の女子選手しか連れてきていませんが、ギリシャのナショナルコーチとして強い選手を育てるべく「半端じゃない」ことをやっているかもしれません!?